生研公開2021

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はじめに
松浦研究室 生研公開2021のウェブページへようこそ。
2021年度も、東京大学生産技術研究所 駒場リサーチキャンパスでは、6月11日(金)と6月12日(土)の2日間にわたり研究所の一般公開を行います。
松浦研究室では、当研究室で取り組んでいるセキュリティに関する研究の展示を行います。

日時
2021年 6月11日(金)  10:00 - 17:00
2021年 6月12日(土) 10:00 - 17:00
研究内容
暗号・署名
モノの電子署名の実現に関する研究
電子署名方式は0と1から構成されるビット列に対して署名を付与する方式です。この従来の電子署名スキームと述語関数を組み合わせることにより、(写真を撮影するといった)センシングを通じた任意の物体への署名を可能にする「モノの電子署名」という概念が存在します。このような「モノの電子署名」を実現する上で必要な理論の定式化および安全性証明を行います。
動的に不正署名を生成するデバイスを追跡可能な集約署名
集約署名は複数の署名を1つの署名に集約でき、センサーネットワークなど多数のデバイスが署名を送信するシステムでの活用が期待されています。多数のデバイスが定期的に署名付きデータを送信し、かつ(故障などにより) 不正署名を生成するデバイスが時々刻々と変わる状況を捉えた追跡可能集約署名のモデルを導入し、その機能的要件と安全性要件の定義を行います。さらに、通常の集約署名とDynamic Traitor Tracing を用いた一般的構成を提案します。
秘密分散
レンジクエリをサポートしたプライベート情報検索方式の構成について
プライベート情報検索(PIR)を用いることで、 データベース上で検索を行うクライアントは、 自身のクエリの内容をデータベースサーバに知らせることなく検索が実行可能です。 既存PIR方式の多くは、 データベース上の単一要素のみを取得する単純なクエリのみをサポートした方式の構成に焦点を当てています。本研究では、 レンジクエリをサポートした方式に対する厳密な安全性モデルの定式化を行い、 関数型秘密分散を用いた安全な構成法を与えます。
低次多項式のための具体的なt-secure準同型秘密共有
ポスター:英語)
準同型の秘密共有はサーバーの一部のサブセットが秘密入力を学習することを制限しながら、 計算をサーバーのセットにアウトソーシングする暗号技術です。 準同型暗号と一般的なアクセス構造の秘密共有スキームを組み合わせることにより、しきい値t構造の具体的なソリューションを提供します。 我々の手法においては、 必要なサーバーの数を定量的に改善します。
仮想通貨・ブロックチェーン
ブロックチェーンを用いた匿名通貨のプライバシー分析及び評価方針に関する研究
ブロックチェーンを用いた匿名通貨に関し、固有の三階層アーキテクチャモデルを提案し、そのプライバシーを分析して評価方針をまとめた上で、現在主流となっている匿名通貨方式(Zerocash、CryptoNote、Mimblewimble等)のプライバシーを比較評価しました。
Proof-of-Verificationの負荷評価
ポスター:英語)
ブロックチェーンを利用した暗号通貨であるBitcoinは、ブロックが生成し続けられることでシステムの健全性を保っています。ブロックの生成は計算量が掛かる、成功報酬付きの早い者勝ち方式で行われます。そのためブロック生成者はそれ以外の計算を省く動機を持ちます。ブロックにはコインの移動を表すトランザクションを多数入れますが、その正当性の確認、特に署名の検証は暗号学的計算が必要なため、省略の第一候補になってしまいます。そこでこの署名検証が済んでいることを示せるようにしたProof-of-Verification(PoV)が提案されました。このPoVの負荷評価について紹介します。
マルウェア対策
スクリプト実行環境に対するテイント解析機能の自動付与手法
悪性なスクリプトを用いた攻撃が拡大しており、それに対して防御するためには、どのような攻撃をするスクリプトかを解析で明らかにすることが重要です。その実現には、スクリプト中のデータの流れを解析するテイント解析が有効ですが、既存の技術ではスクリプト言語やインタープリタに個別に解析フレームワークを構成する必要があり、スクリプトの実行環境の多様性と実装コストを踏まえると現実的ではありません。この解決のため、本研究では、スクリプト言語やインタープリタに汎用的にテイント解析フレームワークを自動生成する手法を提案します。
強化学習・深層強化学習を用いたペネトレーションテストの効率化
擬似的なサイバー攻撃を行いネットワークのセキュリティを診断するペネトレーションテストは有用ですが、きわめて多くのコストと訓練された人員が必要となります。これを強化学習・深層強化学習を用いて効率化することで、負担を低減する方法について紹介します。
ディジタルフォレンジック
Androidアプリケーションにおける静的解析を使用した暗号化API利用の特定
デジタル・フォレンジック調査において、携帯デバイスを調査対象とすることは必要不可欠な作業です。特にスマートフォンに関しては様々なデータが保存されその中には有用なデータが含まれています。しかしながら、最近の傾向としてアプリケーションによりデータが暗号化される場合が少なくありません。そのようなデータの暗号化は迅速な調査の障害となり、スマートフォン・フォレンジックにおける大きな課題の1つとなっています。従来の研究の多くは特定の1つのアプリに対する手動解析で暗号化処理の特定を行っていますが、そのような作業はアプリ解析の知識や経験が必要な手間のかかる作業です。保存データを暗号化するアプリは数多く存在しますが、その中でも多くのアプリが標準的な暗号化APIを使用しています。本稿では、既存のAndroidアプリの静的解析フレームワークを使用し、アプリにおいて標準的な暗号化APIがどのように利用されているかを特定するツールの開発を行いました。本ツールでは自動的にアプリを解析することが可能であり、暗号化処理の特定を容易に行うことができます。その結果、アプリによって暗号化されたデータの解析を迅速に行うことが可能となりました。

IIS Open House 2021, Matsuura Lab.