松浦幹太. ``電子セキュリティトークンとその派生商品'', 情報処理学会論文誌, vol.43, no.8, pp.2372-2380, August 2002.
(Abstract) 情報セキュリティ技術のおかげで,様々な電子トークンが電子取引可能となる.それらのトークンには,例えば購入時に検証に合格した証明書が使用時にも合格するとは限らないなどの理由により,予測不能な価格変動以外の価値変動リスクが存在する.このような不確定性に起因するリスクに対処する方策として,派生商品の導入によるリスクヘッジがある.残念ながら,完全に電子化されたネットワークの世界では,古典的な理論のモデルや仮定がすべて利用できるとは限らない.本論文は,ネットワーク社会に即したリスク管理理論の基礎を提示し,その工学的応用の可能性を示すことを目的とする.この目的を達成するため,まず電子トークンを抽象化し,価格だけでなく予測不能な時間的変化をする価値も属性として持つセキュリティ・トークン(セトック)としてモデル化する.そして,セトックを特徴づけるための諸性質を定義し,価値に関する基本的な派生商品を導入してその価格評価方程式を導く.さらに単純化された場合の解析解に関する数値評価と,リスク計測への工学的応用について考察する.
(Keywords) セキュリティトークン, リスク管理, 派生商品, オプション価格.

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